歯を失ったときの選択肢の一つに「インプラント治療」があります。
見た目の自然さやしっかり噛めることから、多くの方が検討される方法ですが、歯周病がある場合には注意が必要です。
今回は、歯周病とインプラント治療の関係、治療の進め方、そしてインプラントのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
歯周病のままのインプラントはリスクが高い
インプラント治療は、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。
見た目や機能性に優れた治療ですが、土台となる骨や周囲の歯ぐきの状態が良好でなければ、成功しにくい治療でもあります。
特に歯周病が進行している状態では、骨や歯ぐきに炎症や損傷があるため、インプラントを埋入しても安定せず、脱落のリスクが高まります。
歯周病がインプラントに与える影響
歯周病によって歯ぐきや顎の骨が破壊されると、インプラントをしっかり支えることができなくなってしまうことがあります。
天然歯と同様、インプラントも歯周組織によって支えられていますが、歯周病があると細菌感染が起こりやすくなり、インプラント周囲炎という深刻なトラブルを引き起こす可能性があるためです。
インプラント周囲炎は、歯周病と同様に骨を溶かし、最終的にインプラントを失うことにもつながります。
歯周病治療を優先し、安定後にインプラントを行うのが基本
歯周病がある状態で無理にインプラント治療を行うと、成功率が著しく低下します。
そのため、インプラント治療を検討している場合には、まずは歯周病の治療をしっかりと行うことが重要です。
歯ぐきの炎症を抑え、インプラントを安全に行える状態へ整えていきましょう。
歯周病治療の内容と流れ
歯周病治療では、まず歯石や歯垢の徹底的な除去を行い、歯ぐきの炎症を改善します。
必要に応じて、歯周ポケットの深部まで清掃するスケーリングやルートプレーニングを実施し、歯根に付着した細菌を除去します。
また、重度の歯周病の場合には、歯ぐきを切開して感染組織を取り除く外科処置が行われることもあります。
これらの処置を経て、歯ぐきが引き締まり、炎症が落ち着いた段階でインプラント治療を検討することになります。
歯周病安定後の再評価が必要
治療後には、歯ぐきの状態が十分に安定しているかどうかを評価する必要があります。
歯周ポケットの深さ、出血の有無、口腔内の清潔度などを確認し、インプラント治療に進んでも問題がないかどうかを慎重に判断しましょう。
もし歯周病の再発が疑われるような兆候があれば、インプラント治療は延期し、再度の歯周病治療を行います。
インプラント治療のメリットとデメリット
インプラント治療は、多くのメリットがある一方で、リスクやデメリットも存在します。
特に歯周病の既往がある方にとっては、そのバランスをよく理解した上で選択することが大切です。
インプラントのメリット
インプラントは、失った歯を自然な見た目で再現できることが大きな魅力です。
また、周囲の歯を削る必要がなく、単独で歯の機能を回復できるため、健康な歯への負担も少なくなります。
しっかりと骨に固定されることで、入れ歯のようにずれたり外れたりすることがなく、噛む力もしっかりと回復するため食事を楽しむことができ、日常生活の質が向上するでしょう。
インプラントのデメリット
一方で、インプラント治療には手術が必要であり、一定の侵襲が伴います。
治療期間も長くなりがちで、骨の状態によっては再生治療や追加手術が必要になることもあります。
また、インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎になると歯周病同様にお口全体の環境が悪化する可能性があります。
歯周病経験者がインプラント治療を成功させるためのポイント
歯周病がある方にとって、インプラント治療の成功は「歯ぐきと骨の健康状態をいかに維持するか」にかかっています。
適切な治療と管理を行えば、歯周病の既往があってもインプラント治療は十分に可能です。
継続的なメンテナンス
インプラント治療を終えた後も、口腔内の健康状態を良好に保つことを意識しましょう。
歯科医院での定期検診を継続して口腔内のチェックとクリーニングを受け続けることが大切です。
毎日のケア方法を確認し、正しい歯磨きの仕方を実践することが治療を長持ちさせる最大のポイントになります。
生活習慣を見直す
歯周病は、単にお口の中だけの問題ではありません。
近年では、歯周病が心疾患や糖尿病、誤嚥性肺炎などの全身疾患とも深く関係していることが分かってきました。
そのため、歯周病があることでインプラント治療の適応が限られることを、単に「残念なこと」と受け止めるのではなく、健康を見直すきっかけにするのも一つの考え方です。
規則正しい食生活、質の高い睡眠、ストレス管理、禁煙など、生活全体を整えることが結果として歯ぐきの健康につながり、インプラント治療の成功率も高めてくれるでしょう。
歯周病とインプラントの関係を理解したうえで適切に治療を進める
歯周病があるからといって、インプラント治療を完全にあきらめる必要はありません。
ただし、無理に治療を進めることはリスクが高く、逆に歯ぐきや骨の状態をさらに悪化させてしまうおそれがあります。
重要なのは、歯周病の治療をしっかりと行い、その後も継続的なケアを欠かさないことです。
歯周病が安定していれば、インプラント治療は十分に成功が見込めます。
また、治療後も丁寧にメンテナンスを続けることで、天然歯と同様に長く使い続けることができます。
見た目の回復だけでなく、食べる楽しみや発音のしやすさ、生活の快適さといった面でも、インプラントは非常に大きな効果をもたらしてくれるでしょう。
